小鹿田焼の里を訪ねて。自然が生み出す暮らしの器

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Last Updated on 2023年9月9日 by 小林

スタッフ中島です。

あれはちょうど一年ほど前。
私はWEB担当のスタッフ岩谷とともに
大分県日田市にある
小鹿田焼の小袋窯を訪ねました。

カーナビと小袋さんからの情報を頼りに
木漏れ日が美しい山の中をひたすら走ります。
次第に道幅も狭くなってきて、

「ここで合っているのかしら。。。」

と不安に思いつつ突き進むと
右手に小鹿田焼小袋窯の看板を見つけて一安心。

駐車場に車を止めてドアを開けると、
一気に爽やかな空気を感じ、

「ギィーーー、ゴトン」

川の流れの音に重なるように耳慣れない
けれど心地よく響き渡る音をキャッチ。

後で伺って分かったのですが、
これは川の側にある唐臼が
陶土の原料となる岩をついている音でした。

お正月休み以外毎日24時間、
この唐臼は動いており、
ここでは当たり前の音色だそうです。

訪れたきっかけはたまたまお店で見かけた
小袋窯のとびかんなの薬味壺。

その佇まいが何とも優しく、
私の心を釘付けにし、すぐに
お電話をして押しかけてしまいました。

実は小鹿田焼と小石原焼の違いも
良く分からずにいた私。
調べたところ見た目は似ていますが、
実際は全くの別物でした。

約300年も前から「一子相伝」の伝統を守りつづけ、
今も日々の生活の道具としての工芸品を
絶やさず生産し続けている小鹿田焼

山から調達してきた陶土の原料となる岩を
川の水を利用した唐臼で搗き粉にして、
水を通して濾して不純物を取り去り、
それを何度も繰り返して乾燥させて
陶土を作っていきます。
その作業時間は何とひと月以上。

ろくろは電気ではなく蹴ろくろ。
電気ろくろ以上に経験がものを言います。

釉薬は電線の銅や藁や木の灰など
全てここにあるものを使います。
釉薬屋さんから調達することは一切しません。
その釉薬を作る作業も水を通して不純物を取り去り、
それを何度も繰り返して作ります。

年に4回ほど登り窯に火を入れます。
窯の温度や気候の変化を見ながら
24時間体制で調整する、
それも家族のみでの交代制。

全ての作業が電気を使わず手作業。
昔からの伝統技法を守り、
自然と共存する焼き物。
それが小鹿田焼です。

「見てもらえば分かると思うのですが、
工業製品と違って、全く同じものを
作ることは不可能なんですよね。」

と小袋さんがおっしゃる通り、
一つとして同じものがない、
唯一無二の作品たち。

じーっと器を見つめていると
不思議とじわじわと沸き起こる
生命力のようなものを感じます。
私の心を動かしたのは、
自然の中から生み出された作品自体から
発している力だったのかもしれません。

小鹿田焼は現在9軒の窯元がありますが、
作品には全て窯元の名ではなく、
「小鹿田焼」の刻印が入ります。

小袋窯のように個人窯を持つ窯元もありますが、
共同窯や共同の唐臼もあり、
定期的に会合もして、助け合って
窯元全員で伝統を守っているのです。

小袋さんにお話を伺ったところ、
今一番困っていることは道具や釉薬の原料が
思うように手に入らないことだそうです。

刷毛目を付ける和刷毛も
障子文化が無くなってきたことで、
和刷毛の需要も無くなり、
生産も減ってきているそうです。

また和刷毛なら何でも良いわけでもなく、
先日東京で買ってきた和刷毛も
結局使い物にならなかったそう。

また登り窯や数年前の豪雨で流され、
再建した唐臼も今は何とかなっていますが、
職人の高齢化で、次に壊れた時に
修繕してくれる人が見つかるかどうか。。。
と悩んでいらっしゃいました。

国の重要無形文化財に指定された
小鹿田焼の伝統を守っていくために、
様々な問題が絡み合っていることを知りました。

「登り窯に入れられる量も限られていて、
量産することもできず、窯に入れたからといって、
全てが上手く焼きあがるとも限らないんですよね。」

と心苦しそうに語る小袋さん。
実際に作業工程を拝見したことで、
工業製品と同じように考えてはいけないことは
十分伝わりました。

そこでプロキッチンでは一年をかけて、
少しずつ作品を貯めていきまして、
この度やっと皆さんに披露することに!

まずは私の心を釘付けにした
薬味壺をはじめとする壺を3サイズ。

1合薬味壺

2合壺

3合壺

そして毎朝の茶柱発見を楽しんでほしい~
湯呑

カジュアル使いできるグラス型です。


グラス型以外、それぞれ飛びかんなと
飴釉飛びかんなの2色ご用意しています。

こちらは訪問した時に出していただいた、
アイスコーヒー(グラス型)とお菓子(4寸皿)。

素敵です!

「温度差には弱いので、
そこさえ気を付ければ、
電子レンジや食洗器も大丈夫ですよ。」

と日常的に使われている小袋さんは
おっしゃってはいましたが、やはり陶器ですので、
電子レンジや食洗器は控えた方が良さそうです。

皆さんの元に届けられた小鹿田焼の作品を通して、
300年前から親から子へと受け継がれ
伝統を守り続けている作り手の
思いが伝わると嬉しいです。

今秋にはプレートとマグカップを
お披露目しますのでお楽しみに!