ジャムづくりはとても簡単。材料は果物とグラニュー糖、お鍋だけ。とは言っても、ジャムづくりを経験したことがない方は時間も手間もかかりそう…と最初から気が重くなりがちなのではないでしょうか。しかし、余計なものを加えない手作りジャムは安心で毎日食べても飽きない優しい味わいです。もっとたくさんの方に手作りジャムの楽しさや美味しさをお伝えしたいと思い、今回は鎌倉のジャム専門店「ロミ・ユニ コンフィチュール」、学芸大学の焼き菓子とジャムのお店「メゾン ロミ・ユニ」を営む、いがらしろみさんに目の覚めるような美味しいジャムづくりを教わります。
ジャムづくりにあると便利な道具
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一生物の銅のジャム鍋デバイヤー
銅のジャム鍋 38cm -
宝石のようなジャムをご自宅でデバイヤー
銅のジャム鍋 26cm -
IHの皆さんも銅鍋でジャム作りデバイヤー
【IH対応】銅のジャム鍋
26cm -
おすそ分け用にも便利ウェック【12個セット】モールドシェイプ 120ml + クリップ&パッキン S
ろみさんのきほんの「いちごジャム」
ろみさんのジャムは短時間で一気に煮詰めるため、華やかな香りとフレッシュな味わいがぎゅっと凝縮されたジャムに仕上がります。また、下ごしらえにも「食感」と「とろみ」にこだわったろみさんならではのアイデアが。ポイントは「新鮮なフルーツを使うこと」、「強火で短時間で煮詰めること」、「アクをしっかり取り除くこと」。他にも各工程で抑えておきたいポイントをご紹介していますので参考にしてください。
はじめに教えていただくのは王道のいちごジャム。ジャムはコトコト煮詰めるものというイメージを一新する、材料の少なさと工程の少なさにジャムづくりの敷居が低くなるレシピです。
きほんのいちごジャムのつくり方
材料 (ウェック120mlの瓶、8個分)
- いちご
- 1kg
- グラニュー糖
- 700g
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洗ったいちごの水気をしっかりとふき取り、ヘタと痛みのある部分をカットします。
ヘタは葉っぱを持ち上げながらカットするとやりやすいです。白い部分が入ると固くなりやすいのでそこもカット。
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1/3のいちごを残して手で潰していきます。少し実が残るくらいが目安。マッシャーより手の方が潰しやすいです。
全て潰さないのは食感を楽しむため。もっとゴロゴロとした食感を楽しみたいなら潰す量を加減してください。
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②に残りのいちごとグラニュー糖を加えてゴムベラでざっくりと混ぜます。
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銅鍋に材料を入れ、強火にかけます。短時間で一気に煮詰めます。
火をつけるタイミングは材料を鍋に入れてから!
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沸騰すると泡が立ち、アクがではじめます。アクはどんどん出てくるのでヘラで中央に寄せて取りのぞきます。
アクはぶわーっと膨らんで出てくるため、鍋はできるだけ大きいものを使いましょう。鍋の周り、底面は焦げ付きやすいのでこそげ取るようにかき混ぜます。
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アク取りに夢中になるとジャムが焦げ付くのでかき混ぜる手は止めないようにします。白っぽいのがアク。アクは白くマットな見た目で、アク同士で集まってきます。
アクと間違えやすいいのが泡。泡は透明で色に艶があります。
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アクの出が落ちつき、ジャムの色が濃くなってきたら火を止めます。最後に表面をレードルでなでるようにしてアクを取ります。
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清潔な瓶にジャムを入れます。容器のフチギリギリまでたっぷりと。
小さな瓶に入れるときは横口レードルがあると便利です。
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フチに垂れたジャムはきれいにふき取りましょう。
食品用殺菌アルコールなどのアルコールを湿らせたペーパーで拭くとベタつきが取り除けます。
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フタを抑えながらクリップをはめ密閉します。
ゴムパッキンは予めフタに装着しておくと作業がスムーズです。クリップは指で斜めに開いて押しながらはめてみてください。
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最後はウェックの脱気作業です。鍋の中に布かザルを敷いて瓶を入れ、沸騰してから10~15分ほどしたら火を止め引き上げます。
水の量は瓶がかぶるくらいが目安。ウェックの瓶は脱気するため煮沸消毒はしなくて大丈夫です。
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完成!!
果物の色は熱を加えると抜けやすいのですが、強火&短時間で煮詰めると色が抜けずツヤツヤに。
王道のいちごジャムは間違いのない味。毎日食べられるみんなが大好きな味です。しっかりした甘みを感じるけどくどさはなく、そのままトーストやヨーグルトに合わせたり、クリームチーズなどの塩気のあるものとも相性良さそう。「甘味が欲しいのがジャム。ある程度の甘味があったほうが満足感がありますよ」と、ろみさんが教えてくれました。ジャムは甘いもの。砂糖はたっぷり。と覚えておきましょう。 完成したジャムはまるで宝石のようにキラッキラ。ごろごろとしたいちごの果肉と冷めるほどに増していくとろみがたまりません。脱気したWECKなら常温で4~5ヵ月保存可能です。一度開けたら冷蔵庫保存で1週間程度で食べきるようにしましょう。
組み合わせを楽しむ「キウイとりんごのジャム」
酸味のあるキウイと爽やかな甘さのりんごを組み合わせたジャムを作ります。2種類のフルーツを組み合わせて作るときはジャムの仕上がりを想像しながら、どちらのフルーツにとろみがつきやすいかを考え、「潰す」か「カット」するかを決めていきます。今回はキウイは手で潰してとろみを出し、りんごは歯ごたえを残すため角切りにしました。レモンの皮が美味しさ左右するポイント。
材料 (ウェック120mlの瓶、4個分)
- キウィ
- 350g
- りんご
- 150g
- グラニュー糖
- 400g
- レモン
- 1/2個
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キウイの皮をむき、芯を取ってから6等分にカットします。
熟し過ぎているキウイはジャムにしたときの香りがぼやけるので、なるべく新鮮なキウイを選びましょう。
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キウイをボウルに入れて大きな塊がなくなるまで手で潰します。
キウイも手で潰すとトロミのあるジャムに仕上がります。
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りんごの皮と芯を取り、1cmよりちょっと小さめの角切りにします。
煮ても食感が残る絶妙なサイズです。
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切ったキウイとりんごを合わせてレモンを入れます。まずは香りの元になる皮の部分をすりおろし。
皮を入れるか入れないかで風味が全く変わってきます。ワタの部分を入れると苦味が出るので注意してください。
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次にレモンを絞り果汁を加えます。
レモンを切る前にコロコロ転がしておくと絞りやすくなりますよ。万が一、種が入ってしまった場合は忘れずに取り除いておきましょう。
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グラニュー糖を加えてゴムベラでざっくりと混ぜ、鍋に材料を入れ、強火にかけます。
今回はクリステルの浅型を使っています。鍋は浅広でできれば縁が斜めに広がっているとアクが取りやすいですよ。
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沸騰すると同時にアクが立ち上がってきます。焦がさないようにかき混ぜながらアクを取り除いていきます。
鍋の周り、底面は焦げ付きやすいのでゴムベラでこそげ取るようにかき混ぜます。
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大きく膨らむのが泡、集まってくるのがアク。違いがわかりますか?
アクが次々に出てくるので弱火にしたくなりますが、ここは負けずに強火をキープ。
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次第に泡が落ち着き、レモンの香りが立ってきます。白いりんごも少しずつシロップを吸い込み緑色に変わってきます。
ヨーグルトにかけるなら緩めの仕上がりでもOKです。煮詰める時間が長いとジャムっぽいトロミが出てきます。お好みで調整してください。
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ウェックに入れ脱気をしたら完成です。
出来たてはさらっとしていますが、冷めてくるとジャムらしいとろみが出てきます。
爽やかな酸味とりんごのしゃくしゃくした食感が楽しく、トーストにたっぷり盛ってかぶりつきたくなる美味しさに仕上がりました。普段からジャムづくりを楽しんでいる店長みさこが、実際にろみさんから手ほどきを受けて作ったのですが、いつもと違う作り方に衝撃を受けつつも、完成したジャムを前に「自分が作ったジャムとは仕上がりの色が全然違う!」と興奮気味。経験が必要となるのはアク取りの作業ですが、何回か作っているうちにコツが掴め、ろみさんのお店に近い味に仕上がると思います。
ろみさんに聞く「もっと知りたいジャムのこと」
ろみさんにジャム作りを教えてもらった店長みさこ、色々聞きたいことがいっぱいです。ジャム作りの素朴な疑問からちょっと答えにくいかなと思う質問まで、ろみさんに聞いてみました。
店長みさこ
ありがとうございました!
ろみさん
どうでした?作り方は分かりましたか?
店長みさこ
よく分かりました。わたし、一昨日にいつも自分が作っているレシピでいちごジャムを作ったんです。でも見た目の色艶が全然違いました! いつものはくすんだ赤だけど、ろみさんのジャムは真っ赤で本当の宝石のように輝いていて、香りも違うしいちごの味も濃厚で美味しかったです。
それではジャムづくりについて、いくつか教えてください。まずは、スタッフからの疑問でも多かったのですが、傷みかけの果物を使っても美味しく仕上がりますか?
ろみさん
傷みかけだとそれなりの味。やっぱりいい香りのフルーツを使ってあげるといい香りのジャムになるので、美味しいジャムを作りたければ美味しい香りのフルーツを選んでください。一番大事なのはフルーツの香りの部分。お砂糖を入れるので甘みの部分はそれほど重要ではなくて、酸っぱいのが好きだったら酸味の強いフルーツを合わせるとかレモン汁を多くしたりして調整もできるんですけど、香りの部分ってそのフルーツしか持っていないものなので、それで美味しさがだいぶ変わります。
店長みさこ
本当に今日のジャムはとってもいい香りでした。わたしは果物に砂糖をかけて半日くらい置いて水分を出す作業をしていたんですが、そうするとろみさんのレシピと味に違いは生まれますか?
ろみさん
その工程は果物の水分を引き出して、その水分で煮ていくって感じなので必要があればわたしもやりますが、果物を手で潰すと水分が出るのでそうなるとすぐに煮ることができるんです。
店長みさこ
今日の作業でアク取りが重要と何度かおしゃっていたんですが、アク取りをサボるとどうなりますか?
ろみさん
アクアクな感じになります(笑)。透明感のようなものがあまりなく上の方にアクが浮いてしまって、WECKだと特にガラスの蓋なので上が白くなっちゃいますね。そして、手作り感…。
店長みさこ
お店のような仕上がりにはならないってことですね。
ろみさん
そうね、やっぱりフルーツ本来の綺麗な色のジャムに仕上げたいじゃないですか。なので、そういう意味ではアクを取ることで綺麗なジャムに仕上がります。取らなくてもいいっちゃいいんですけど、一番最初にわーっと出てくるアクは取った方が風味がいいかなって思いますね。
店長みさこ
保存時にジャムにカビが生えてしまうことってあると思うんですが、食べ切れなかったときはどのように保存するのがいいですか?
ろみさん
密閉して空気が出入りしないっていうのが保存するときのポイントなんです。WECKに関してはぎゅっと脱気して中が真空に近い形になることで、空気の出入りがない状況になります。カビが生えないようにまずはしっかり密閉することと、開封したら冷蔵庫で保存して1、2週間くらいで食べてください。ジャムは各家庭で冷蔵庫の中に長く入っているベスト3くらいだと思うんですよね。でもどんどん瓶の中で味って変わっていっちゃって、開封すると特に変わるんですよ。開封したらせいぜい2週間で食べること。
店長みさこ
ジャムづくりに適した鍋の大きさやどんな材質がいいのか教えてください。
ろみさん
果物500gくらいだと直径が20cm、24cmあるといいですけど、フルーツの重さでちょっと変わる感じですかね。18cmのお鍋しかないってときには300gくらい、ちょうどいちご1パックで作るのがいいと思います。そして、アクがわーって出てくるので、材料はお鍋の高さの半分以下でスタートした方がいいです。プラス、熱伝導率がいい材質のお鍋。うちのお菓子教室ではジャム用の銅鍋を使っています。
店長みさこ
銅製のジャム鍋がジャムづくりにおすすめと聞いて、プロキッチンでも取り扱いをはじめることにしたんです! 銅鍋は熱伝導に優れ強火調理ができて、色が鮮やかに仕上がるんですよね。でも、しょっちゅう使うものじゃないので、お手入れはどのようにしたら良いのか教えて欲しいです。
ろみさん
銅鍋はきれいに洗ってよく乾かすことが大事なんです。乾かしたら新聞紙などで包んでおいて、使う前にお酢とお塩で表面の酸化した部分をスポンジで磨くんです。使う前に手入れするだけなのでそんなに大変じゃないですよ。乾いていれば錆びないし。
店長みさこ
ジャム用の銅鍋はサイズが大きいかなと思う人もいると思うんですけど。
ろみさん
大きいけど、やっぱりジャムづくりをしていると一度にいちご2kgとか3kgとかで作りたくなってくるんですよね。今回は1kgでジャムを作ったけど、2kgくらい作れるお鍋の方がジャムづくりには必要になります。年に5、6回ジャムを作るなら38cmくらいの大きなジャム鍋はすごく作業がしやすのでいいと思いますよ。あと、ジャムづくりにハマると誰かにおすそ分けしたくなるんですね。なので、小さめの保存瓶をたくさん用意しておくといいです。WECKなら2~3日で食べきれる120mlがちょうどいいと思います。
(12個セットはこちら)
店長みさこ
調理中にル・クルーゼはジャム作りに向いていないって話されていましたが、ホーロー鍋は全てダメですか?
ろみさん
向いていないっていうよりも、ル・クルーゼは弱火でじっくり火を通すための鍋なので、強火で一気に火を通したいジャムづくりっていうことからすると目的がずれているんですね。なので、なるべく火が伝わりやすく底が広いお鍋で作る。ル・クルーゼだから、銅鍋だから、っていうことよりもどうやったら早く火が入るかな、を考えます。銅鍋は強火調理でも焦げないですが、ホーローは強火で一気に調理すると焦げやすいんですよ。ですので、焦げ付きやすいホーローじゃない方がいいです。
店長みさこ
ジャムにしやすい果物、難しい果物ってありますか?
ろみさん
柑橘系のマーマーレードは意外と工程が多いので、ちょっと難しいかなーとは思うんですけど。うーん。バナナは意外と簡単です。
店長みさこ
バナナ??バナナも水分が出るんですか?
ろみさん
バナナは水分よりもでんぷん質が勝っちゃうので水分が足りないと固い感じのジャムに仕上がっちゃうんですね。なので、水分をちょっと足してジャムにするんですけど、例えばオレンジのような水分の多いフルーツを入れればそれで補えるんです。オレンジの果肉だけだと全然とろみが付かないのに、バナナと一緒になるといい具合にとろみを付けてくれるしオレンジが水分を与え、かつちょっと爽やかさを出すみたいな。美味しいですよ。組み合わせを考えはじめると楽しくなります。
店長みさこ
自分のイマジネーションで果物を組み合わせて、食感を自分の好みに変えられるのって楽しいですね。
ろみさん
とろみの付きやすい果物とちょっととろみは付きにくいけど食感が残るとか、そういう風にして組み合わせはじめると一気にジャムづくりの楽しさが広がります。まずはフルーツ単品でジャムを作ってみてどうなるかっていうのがある程度わかると、この果物はちゃんと潰しておこうとか、潰さなくても煮崩れるんだよねっていうのが掴めてきます。フルーツの特徴を知っていくっていうのはジャムづくりの醍醐味の部分ではありますね。
店長みさこ
組み合わせの可能性が広がると楽しい。家に大量にあるりんごの消費に頭を悩ませてたけどジャムを作ってみたくなってきました。
ろみさん
あとは、ちょっとお酒を入れたりとか、紅茶のティーバックを入れてみたりとか。りんごのシンプルなジャムも作って、そこにシナモンやバニラを入れてアップルパイ風味にアレンジしたり、キウイを入れたり、アールグレイの茶葉を少し入れるとアールグレイ風味のりんごのジャムができますよ。
店長みさこ
組み合わせの可能性は無限ですね。お菓子づくりやジャムづくりの時は紅玉のイメージだけど全然そうじゃなくてもいいんですね。
ろみさん
もちろんもちろん、全然いいんです。
知れば知るほどハマるジャムづくり
旬の果物は美味しいだけでなく値段も安い。そんな旬の果物にひと手間かけるだけで、キラキラ輝く宝石のような美味しいジャムに生まれ変わります。ジャムを作る時間は部屋中に甘い香りが漂い、とても贅沢な気持ちに包まれますよ。ろみさんのジャムは工程がシンプルで気軽にトライできますので、思い思いの果物でジャムを作ってみてください。
いがらしろみ
フランス菓子店勤務を経たのち、パリに留学しル・コルドン・ブルーでフランス菓子を学ぶ。帰国後、菓子研究家romi-unieとして活動を開始。鎌倉にジャム専門店「Romi-Unie Confiture」をオープンし注目を集める。その後も学芸大学に焼き菓子とジャムの店「Maison romi-unie」、カップケーキ専門店「Fairycake Fair」のプロデュース、書籍の出版、イベント、お菓子教室の講師などを通じ、「お菓子作りの楽しさをひろめる活動」を行う。